象牙の良し悪しは、見た目だけでは決まりません。
もちろん美しさも大切です。ただ、それ以上に大切なのが目の詰まり方と粘りです。この二つが、彫ったときの線の出方と、押したときの印影、そして何十年と使ったあとの姿を決めます。
そして厄介なことに、これは写真では分かりません。並べて見比べても、白く美しい棒が並んでいるだけです。
以前は、彫ってみるまで分かりませんでした
10本必要であれば、倍を仕入れていました。その中から見て、触れて、厳選する。それでも彫刻してみて品質が劣っていれば、返品させていただくこともありました。
彫って初めて分かることが、確かにあったのです。
いまは、その返品が一切ありません
理由は、仕入れの入り口にあります。
鈴印の象牙は、日本でただ一人、今も手作業だけで象牙をとる職人の手を通ってきます。機械で挽くのであれば、決められた通りに刃を入れるだけです。けれど手でとる場合は、輪切りにした象牙の断面を一つひとつ見て、どこから印材をとるかを墨で決めていきます。
白く濁った部分、黄みがかった部分、細かい筋。その配置は一本ごとに違い、墨を入れる位置が数ミリ違うだけで、とれる印材の等級が変わります。
つまり見極めは、彫るよりずっと前、断面を見た時点で終わっているのです。この工程は象牙を手でとるで、写真とともにご紹介しています。
見て、触れて、彫って

そのうえで、届いた印材を私たちも確かめます。職人が見極めたものを、彫る側からもう一度確かめる、ということです。見て、触れて、彫って。この三つです。
まず届いた印材を目視し、キメの揃い具合などを確かめます。よくお客様からは色について聞かれ、多くの方は白っぽい方を好みますが、私自身は、象牙という名がそのまま色になった、あのアイボリー色に凄みを感じます。そのため色は判断材料とせず、目視の段階ではキメの揃い具合だけを確認します。
次に、触れて確かめます。象牙を輪切りにした際の外側ほどザラつきがあり、中心に近づくほど吸い付くほど滑らかになってきます。この手触りは店頭では実際にお客様ご自身でも共有させていただいておりますが、みなさん、はっきりとした違いに驚かれます。そして、一度上上ランクに触れたあとには、中材の荒さを感じ取れるまでになります。
彫刻する際には、刃物の入り具合を感じます。ここでは繊維の荒さと、硬さを感じます。外側ほど繊維が荒くガリガリとしていて、柔らかめ。品質が高まるほど刃物がスッと狙い通りに入り、かつ硬い。ちなみにインド象は、ハード材のきめ細やかさを感じる上、ハード材特有の枯れ感——乾いたような素っ気なさがなく、しっとりと艶を感じ、彫刻師に至福の時間を与えてくれます。
この三つで確かめているのは、結局ひとつのことです。
上質な象牙ほど、目が詰まっていて、しかも粘りがある。
緻密になるほど脆くなりそうなものですが、良い象牙は違います。目が詰まっているのに、刃を入れれば欠けずに通る。硬さと粘りが同居している。これが上質さの正体です。
見て、触れて、彫って。三つとも、同じ一点を別の感覚から確かめているにすぎません。
そして、その最高峰がインド象です。
もう手に入らないと思っていた象牙に、いま囲まれています
正直なところ、この品質の象牙は、もう入手困難だと思っていました。それがいま、店にあります。
ぜひ実際にご覧いただければ幸いです。
等級ごとの違いと価格の目安は象牙の品質の見分け方に、ご来店とご相談の方法は象牙印鑑の選び方にまとめています。
在庫はマスターピース、デッドストック、民生の各一覧からご覧いただけます。
素材そのものの話はインド象の象牙は、なぜ最上とされてきたのかに書きました。
象牙についてもっと知りたい方へ
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