象牙印鑑(実印・銀行印・認印)の選び方と価格

象牙印鑑とは — なぜ選ばれるのか

赤い布の上に置いた象牙の印鑑2本

象牙は、朱肉ののりと押し味が他の印材と大きく異なります。朱肉の「油」を吸い上げる性質があり、紙への転写率は限りなく100%に近いと言われています。実際に押す際もそれほど力を入れなくても鮮明な捺印が可能です。

さらに象牙には、使うほどに写りが良くなり、朱色を含んで色合いが深まっていく「経年変化」という特徴があります。新品の状態では気づきにくい象牙本来の目(キメ)が、使い込むほどに浮き出てきて、品質の高さがはっきりと分かるようになります。

実印や銀行印は、一度作ったら十年、二十年と使い続けるものです。とくに実印は名義変更をしない限り一生同じものを使う方がほとんどです。「一生この品質を渡していいか」で考えたとき、品質も一本ずつ異なり、使うほどに完成していく象牙は、一生モノの実印・銀行印にこそ選ばれています。

象牙印鑑の長所と短所

象牙の印鑑で書類に捺印する手元

象牙の印鑑を選ぶ前に、良いところと、知っておいていただきたいところを並べておきます。

長所

  • 朱肉ののりが良く、軽い力で鮮明に押せます。
  • 朱肉の油を吸い、使うほどに写りが良くなっていくため、印材で唯一の「育つ素材」です。
  • 骨や歯と同じカルシウムが主成分で、木や角のような摩滅や反りが起こりません。色は育っていきますが、形は変わらない素材です。
  • 使い込むほどに、薄いクリーム色から飴色へ変わっていき、丁寧に育てた色合いの迫力は、何物にも勝ります。
  • 硬くキメが細かいため、細い線まで精密に彫ることができます。
  • 良い象牙であれば彫り直しができ、一生、あるいは世代を超えて使い続けられます。

短所

  • 価格が高く、同じ象牙でも等級によって5倍近く変わります。
  • 朱肉の油を吸う素材なので、印面以外に付いた朱肉を放置すると染み込んで落ちなくなります。捺印のたびに拭き取る習慣が必要です。
  • 直射日光の当たる場所や、夏場の車内のような高温は避けてください。
  • 国外へ持ち出すことはできません。海外にお住まいの方への贈り物には選べません。

なお、象牙は新しく海外から入ってくることがなく、いま国内にある在庫限りの素材です。だからこそ、安価な象牙や漂白された象牙(欠けや割れが起きやすく、彫り直しにも耐えられないことがあります)を避け、良い象牙を選ぶことが大切です。キメや色から品質を見分ける方法は象牙の品質の見分け方で、毎日のお手入れはこのページの下の「象牙印鑑のお手入れ」でご紹介しています。

等級と価格の全体像

木の台に並べた象牙の印鑑6本

 

象牙は天然素材のため、キメの細かさによって品質が変わり、同じ「象牙」でも等級によって価格は5倍近く変わります。鈴印では国内最高峰から上位5ランク(極上・特上・上上・上・中)のみを取り扱っています。

等級 実印 銀行印 認印
中材 6万円台〜 4万円台〜 3万円台〜
上材 7万円台〜 5万円台〜 4万円台〜
上上材 10万円台〜 7万円台〜 7万円台〜
特上材 14万円台〜 12万円台〜 11万円台〜
極上材 19万円台〜 16万円台〜 15万円台〜
希少品(民生・インド象・細工象牙) 70万円〜160万円台

※税込・定番品の価格です。象牙は一点ごとに表情が違うため、実際の在庫と価格は各商品ページでご確認ください。等級ごとの色・光沢・キメの細かさの違いを実物写真つきで詳しく知りたい方は、象牙の品質の見分け方をご覧ください。

数字で見る、象牙印材の希少さ

象牙の希少さは「〇本に1本」と語られることが多いのですが、その多くは出どころがはっきりしません。ここでは、牙から印材を一本ずつ手で取り出している職人に、長年の感覚を数字で聞いた内容を載せています。

  • 牙1本から取れる印材は、およそ200本です。
  • 芯持ちの印材が取れる牙は、10本に1本あるかないか。取れても1本の牙から10本弱で、印材2,000本のうち芯持ちは10本弱しかありません。
  • ハード材の極上(目無し)が取れる牙は、100本に1本あるかないか。その1本から取れる極上の目無しは、多くて50本ほどです。印材2,000本に換算すると、多くて5本です。
  • ハード材は、そもそも芯に穴があいているため、芯持ちは普通ありません。芯の良いものが取れる牙は300本に1本あるかないかで、印材2,000本に換算すると0.33本。市場にはまず出回らない印材です。

しかも、芯がきれいなものに限れば、希少さはさらに高くなります。

象牙印鑑のサイズの目安

象牙の印鑑は、実印・銀行印・認印の順に、ひとまわりずつ小さくするのが基本です。フルネームは文字が込み合って小さく見えるため、実印は少し大きめが釣り合います。

用途 おすすめ 鈴印の象牙で選べるサイズ
実印(フルネーム) 16.5mm 15・16.5・18mm
銀行印(姓または名) 15mm 13.5・15・16.5mm
認印(お苗字) 12mm 12mm

実印だけは、印鑑登録で大きさの規定があります。多くの市区町村では8mm以上25mm以内ですが、12mm以上を条件にしている所もあるため、鈴印では12mm以上をおすすめしています。銀行印と認印に規定はありません。

用途別ラインナップ

実印・銀行印・認印の大きさと印影の違い

象牙印鑑は、違法ではありませんか

「象牙」と聞くと、密猟や違法取引のニュースを思い浮かべて、「買っても大丈夫なのだろうか」と不安になる方もいらっしゃると思います。

  • 象牙の国際取引(輸出入)は、ワシントン条約で原則禁止されています。禁止のあと、1999年と2009年に一度ずつ、条約の許可のもとで南部アフリカの象牙が輸入されましたが、これは柔らかく乳白色の「ソフト材」でした。印鑑に向く硬い「ハード材」は、1989〜90年の禁止以降、一度も日本に入っていません。鈴印の印鑑に使っているハード材は、すべて30年以上前に日本へ入ってきた牙です。
  • 国内の取引は「種の保存法」で厳格に管理されています。事業として象牙製品を扱う者は「特別国際種事業者」として国に登録しなければならず、取引のたびに内容を記録し、5年間保存する義務があります。
  • 鈴印は特別国際種事業者として登録を受けています。登録番号は第02931号です(登録の有効期間の満了日:2031年5月31日)。
  • 鈴印でお届けする象牙の印鑑には、国の認定シール(標章)をお付けしています。適正に手に入れた象牙から作られた製品であることを示すもので、一つひとつに固有の認定番号が入っています。

正しい登録のもとで取り扱われている象牙の印鑑は、安心してお求めいただけます。

そのうえで、私たちの考えをお伝えします。象だけが特別に守られ、他は問われない。その流れには、正直なところ違和感があります。私たちは、命をいただかずに生きることはできません。問うべきなのは「何の命なら許されるか」ではなく、いただいた命をどう扱うかだと考えています。そして、その考えを形にする前提が、決められたルールを守ることです。

規制が生まれた理由、アフリカの現地で起きていること、制度の詳しい中身は象牙は合法なの?にまとめています。

象牙と印鑑の歩み

白い背景に置いた象牙の印鑑2本

象牙は古くから、その希少さと美しさ、加工の難しさから、権力や富の象徴とされてきました。

日本に残るいちばん古い象牙の細工は、奈良の正倉院に伝わる「紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)」です。赤く染めた象牙に文様を彫り表した、ものさしです。『日本書紀』にも、象牙を「きさのき」と呼ぶ言葉が出てきます。江戸時代の絵入りの辞典『人倫訓蒙図彙』(1690年)には、象牙を鋸で切り、三味線の撥や琴柱を作る職人の姿が描かれています。詳しくは仏教と象の深いつながり(象牙専門)をご覧ください。

明治から大正にかけての象牙彫刻の最盛期には、インド象の象牙「唐方(とうかた)」が細工物の多くに使われていました。そのアジア象の象牙は1975年に、アフリカ象の象牙は1990年に、商業目的の国際取引が禁止されました。印鑑に向くハード材は、いまもそれより前に入ってきたものだけです。

1990年より前、鈴印の店頭で実印をお作りになる方の半分ほどが、象牙を選ばれていました。禁止されたあとも、店頭の様子が大きく変わることはありませんでした。ただ、そこから象牙の値段は上がり続け、これまで一度も安くなったことはありません。それからは、「まだあるんだ」と驚かれるお客様も出てきました。

鈴印は1932年(昭和7年)の創業以来、三代にわたって象牙と向き合ってきました。祖母は、祖父や父が象牙を彫る音を聞いて、「象牙は本当に良い音がするね。聞いていて心地よい」と言っていたそうです。長くお取引をいただいている問屋からは「路面店での象牙の販売本数は日本一ではないか」と言われています。「象牙といえば、栃木の鈴印さんだよね」と、全国の同業の方から声をかけていただいたこともあります。

インド象の象牙についてはインド象の象牙について、鈴印の歩みは鈴印についてでご紹介しています。

鈴印で選ぶ理由

すべての命に敬意を。

牙を持つアフリカゾウの群れ

「象牙=悪」という論調を目にする機会がありますが、アフリカの現地では、象牙の適正な活用によって得られた資金が、人と象が共に暮らすための環境整備に活かされているという現実があります。私たち鈴印は創業以来、その尊い命を決して軽んじることなく、手でとり、手で彫るという伝統を通して、心を込めて形にしてきました。

二人の目利きが、品質を担保します。

象牙を手ノコギリで切り出す職人

私自身、かつて彫刻師だった時代は、今の約10倍の本数を毎日彫っていました。無我夢中で彫り続けるうちに、自然と「彫れば品質が分かる」ようになっていったのです。その後は父のアドバイスのもと、鈴印の在庫に実際に触れ、最高級の品質を見て、触れて、感じ取れるようになりました。

以前は、機械化された大手メーカーから仕入れていました。必要な本数の倍を取り寄せ、そこから半分を選び抜き、品質に満たないものは返品するというやり方です。

今は、日本でただ一人、手で象牙をとる職人から仕入れています。初めてその印材を目にしたとき、驚きました。三十年前には当たり前に手に入っていた、本当に凄みのある印材ばかりだったからです。「まだこれほどのものが残っていたのか」というのが、正直な第一印象でした。

その職人も、私と同じことを言います。のこぎりを入れ、刃物が象牙に触れた瞬間に、品質が分かるのだと。つまり、品質を正確に見抜ける職人が二人、仕入れの入口と店の出口で交差している。これが、鈴印の象牙の品質を担保する一番の理由です。

手でとる良さを、職人は「素材のいちばん良いところを狙って切れること。それでも良くなければ、印材にせず端材にする」と言います。

この職人が象牙を手でとる工程、そして鈴印の彫刻師が手で仕上げる工程を、写真とともに詳しくご紹介しています。→象牙を手でとる/象牙を手で彫る

手で彫る。

印鑑を一本ずつ手で彫る彫刻師の手元

彫刻師は、象牙という生命の力強さを指先から感じながら、永く使われるお客様のことを想い、昔ながらの製法で一本一本手で彫っていきます。象牙の印材は二つとして同じものがない個性です。お名前も、他の誰でもないあなただけの個性です。その二つの個性を繋ぎ合わせるのが、彫刻師の務めだと考えています。

彫っているのは、三代目の鈴木延之です。修業のことや技術展でいただいた賞は、鈴印について「彫っているのは、三代目の私です」でご紹介しています。

象牙印鑑のお手入れ

捺印のあと、象牙の印鑑に付いた朱肉を拭き取る手元

  • 捺印のたびに、柔らかい布で朱肉を拭き取ってください。きれいな飴色に育てる方法は、これだけです。
  • 保管は、印鑑ケースに入れたまま引き出しの中など、暗く、気温の変化が少ない場所が理想です。
  • 象牙は風と、湿度の急な変化が苦手です。エアコンの風が直接当たる場所は避けてください。
  • アルコールや薬品を含んだクリーナーでの拭き取り、水に長く浸けること、硬いもので強く擦ることは避けてください。

黄ばみは汚れではなく、象牙の経年変化です。印鑑を白く戻すご依頼は、ひびが入る危険が極端に高いため、お受けしていません。理由も含めて象牙印鑑のお手入れ・保管方法に詳しくまとめています。

象牙印鑑の保証とアフターサービス

お届けした商品に不備があった場合は、良品と交換いたします。鈴印で扱っている象牙であれば、将来、彫り直してお使いいただくこともできます。

ご結婚などで名字が変わったときや、長年のご使用で文字が浅くなったときは、同じ印材を彫り直してお使いいただけます。彫り直しの料金は、約3万円〜です。

「落として欠けてしまった」「昔ほかで作った象牙を彫り直したい」といったご相談も、まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

よくある質問を表すはてなマーク

Q. 象牙って今もあるんですか?
A. はい、あります。ただし国内の在庫のみです。

Q. 象牙は彫り直して使えますか?
A. できます。ただし、安価な象牙は彫り直しの熱でヒビが入ってしまうことがあります。鈴印で扱っている象牙であれば、彫り直してお使いいただけます。印鑑の彫り直しは、思い出だけでなく、持ち主の意思も継承することだと私たちは考えています。

Q. おすすめの等級はどれですか?
A. 極上材です。国内最高峰の品質で、一生ものとしてお持ちいただくなら極上材をおすすめします。

Q. 極上材の魅力は?
A. 赤ちゃんの肌に例えられるほどの、なめらかなキメの細かさです。象牙の中で最も硬く、最も精密な彫刻を可能にします。

そもそも、手でとる最高品質の象牙自体がなかなか手に入りません。すべての象牙から極上材が取れるわけではなく、品質は実際に切ってみるまで分かりません。つまり極上材との出会いは、いわば奇跡です。量産のきかない手作業だからこそ出会える品質、それが鈴印の象牙はおそらく最高峰だと自負している理由です。

Q. 納期はどのくらいですか?
A. 通常1週間程度、彫刻前のイメージチェックをご希望の場合は2週間程度いただいております。

Q. 白い象牙ほど良いのですか?
A. そうとは限りません。市場に多く出回っているソフト材には、シマや色の不均一を隠すために漂白されたものが少なくありません。漂白すれば白くはなりますが、組織が傷み、欠けや割れが起きやすくなります。当店では漂白した象牙は扱っておりません。仕入先の職人によると、漂白した象牙は100本に1本ほど、割れるおそれがあるそうです。

Q. 黄ばんできた印鑑を、白くしてもらえますか?
A. お受けしていません。印鑑は細い線で文字が彫られていて、朱肉の油ごと落とそうとすると、ひびが入る危険が極端に高くなります。印面が欠ければ彫り直しになり、実印なら届け出のやり直しも必要です。捺印のたびに拭き取って、飴色に育ててください。

Q. ハード材とソフト材は、どう違うのですか?
A. 象牙は、棲んでいた土地によって硬さが違います。硬い「ハード材」はキメが細かく、印鑑の細い線まで彫れます。同じ15ミリの印材でも、ハード材のほうが1グラム弱重くなります。柔らかい「ソフト材」は側面にタケノコのような形のシマが出やすく、それを隠すために漂白されることが少なくありません。鈴印の印鑑はハード材で作っています。

Q. 極上の「目無し」は、牙の芯に近いところから取れるのですか?
A. 必ずしもそうではありません。印材になるのは牙の真ん中から半分ほどで、先端に近いほど良いものが取れる傾向があります。ハード材は芯に近いほど黒っぽい影(芯影)が出るため、目無しがどこから取れるかは、実際に切ってみるまで分かりません。

Q. 横目の角印に、日輪(丸い模様)は出ますか?
A. 出ません。横目は、切り出した直後はシマが平行な線にしか見えず、丸い棒に仕上げて初めて円の模様が現れます。角印にすると、側面に平行な線が出るだけです。また横目は反りやすく、鞘を付けると抜けなくなるおそれがあります。鞘とケースについては、象牙印鑑の鞘(さや)とケースにまとめています。

Q. 家にある象牙が本物かどうか、見てもらえますか?
A. はい。写真を送っていただければ、まずは無料で確かめます。断面と、牙の形のものは先端が分かるように写してください。写真はこちらから送れます。見分け方は象牙の品質の見分け方にまとめています。

Q. 象牙の印鑑を、海外へ持って行けますか?
A. できません。象牙製品は、国外へ持ち出すことも、海外から持ち込むことも、原則として禁止されています。海外にお住まいの方への贈り物としてお考えの場合はご注意ください。

象牙という素材そのものについて詳しく知りたい方は、象牙についてもあわせてご覧ください。

 

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象牙は一本ごとに色も木目も異なります。「実際に手に取って選びたい」「予算の中でどれが選べるか相談したい」という方は、どうぞお声がけください。

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