象牙の印鑑は、印材だけで完成するものではありません。印鑑を収めるケースまでそろって、一つの道具になります。さらに印面をしっかり守りたい方には、鞘を付けるという選び方もあります。
このページでは、鈴印が象牙の印鑑に合わせている鞘とケースについて、選ぶときに知っておいていただきたいことをまとめました。
鞘(さや)とは

鞘は、印面にかぶせるキャップです。法人の実印でよく見かけますが、個人の実印や銀行印にも付けられます。
象牙の鞘は、ひとまわり太い印材を短く切り、中をくり抜いて作ります。印材は天然のものなので、1本ずつ太さがわずかに違います。そのため鞘は、印材ができあがってから、職人がその1本に合わせて削り出します。あつらえた靴と同じで、その印材にしか合いません。
手間がかかるぶん、鞘付きの印鑑は数が少なく、価格も上がります。
鞘が付いていると、何がよいのか

印鑑でいちばん欠けやすいのは、印面のふちの枠です。そして枠は、印影を決めるいちばん大事なところでもあります。鞘をかぶせておけば、万一落としても枠を守れます。
押したあと、もう片方の手には外した鞘があります。ケースに戻すのを忘れても、手にした鞘は自然と元に戻すので、印面がむき出しのまま置かれることが少なくなります。
象牙は歯と同じカルシウムでできていて、燃えません。火災で耐火金庫ごと焼けてしまった会社で、鞘付きの実印は、持ち手が黒ずんでも鞘の中の印面は無事でした。おかげで、その後の契約の手続きも滞りなく進んだそうです。
鞘の分だけ重さも増し、手にしたときの格も一段上がります。
鞘の象牙は、印材とは別の材で作りますが、鈴印では同じ生地の「共鞘」もご用意しています

あまり知られていませんが、鞘のほとんどは、印材とは別の生地・別の品質の象牙で作ります。鞘の役目は印面を守ることなので、印材ほど品質を問いません。そのぶん、価格を抑えられます。
一方で鈴印では、同じ生地を使った「共鞘」もご用意しています。同じ生地の同じ位置から取り出すため、見た目が完璧にマッチしています。

ひとまわり大きな印材を1本使って鞘に加工する、非常に贅沢な作りとなっています。
関東と関西で、鞘の形が違います

こちらは業者間でもあまり知られていませんが、鞘には地方ごとの形があります。関東は溝あり、関西は溝なし。鈴印で作る鞘付きは溝のないもので、いわゆる関西風となっております。
以前は鈴印も関東風の鞘でしたが、手で取る職人さんと知り合い、この形状を教えていただき、よりシンプルで素材の良さで勝負できる関西風に移行しました。
KFケース──印材に合わせて、手で作るケース

鈴印の象牙の印鑑には、KFケースを合わせています。KFは「ケースの深田」の頭文字です。大正元年の創業から三代続く、日本で唯一、手作りを続ける印章ケース工房で、いまはご兄弟お二人で作っています。昔は印章ケースを「サック」と呼び、作る店は「サック屋」と呼ばれていました。
多くの印章ケースは、規格に合わせた部品を組み立てて作ります。KFケースは、印材1本ずつに合わせて作ります。
ケースは、革・金枠・内張・型・肉池(朱肉を入れるところ)の5つでできています。それぞれに選べる種類があり、組み合わせは約200通り。鈴印が、印材ごとに合うものを選んでいます。
- 革:ワニ・トカゲ・ゴート(山羊)・カーフ(牛)
- 型:プラスチックの型と、木の型があります。ワニ革のケースは、ベニ松を削り出した木の型です。印材に合わせてあつらえるので、印鑑をぴったり包みます。
- 閉じたときの音:木の型は、角を少しずつ斜めに削って、閉じたときにいい音が鳴るようにしてあります。2017年には、テレビ番組「和風総本家」でもこの工房が紹介されました。
- 金枠:ニッケルを使っています。一般的なクロームメッキの枠よりやや金色がかって温かみがあり、象牙の色によく合います。開け閉めの感触も、しっとりしています。
- 内張の鶴亀:蓋の内側の鶴亀は、天地が逆に見えます。印面を「地面」と考え、印鑑を収めたときに正しい向きになるようにしているためです。
- 肉池の蓋:手で持ったときに上下がわかるよう、左右で形を変えています。印鑑を入れたときに水平になるよう、重さの配分まで考えられています。

KFケースの種類と、ほかのケースとの違いは、ブログの職人さんのオールハンドメイド、KFケースの魅力に迫るに詳しく書いています。
牙蓋(げぶた)──もう作れない、象牙の蓋

肉池の蓋が象牙でできているものを「牙蓋」と呼びます。今はこの蓋を作れる職人がいません。
20年ほど前、「もう作れなくなる」と聞いた先代が、まとめて仕入れておきました。2018年に単品での販売を終え、今は最高級の品にだけ付けています。在庫がなくなれば、二度と手に入りません。
思い返すと先代も、牙蓋がなくなると聞いたときは、かなり残念がっていました。
象牙の印材と共に並ぶ象牙の蓋、これだけで商品の格式と所有欲が一気に高まります。
選び方のめやす
- 実印や法人の印鑑で、落としたときの心配を減らしたい → 鞘付き
- 一生ものの一本に → 牙蓋の付いたケース
鞘付き・牙蓋付きの印鑑は、民生とマスターピースに多くあります。象牙そのものを削り出したケースの一点物、象牙削り出し印章ケース付きの実印もあります。
等級ごとの違いと価格の目安は、象牙印鑑の選び方と価格にまとめています。
迷われたときは、ご相談ください
象牙は一本ごとに色も木目も異なります。「実際に手に取って選びたい」「予算の中でどれが選べるか相談したい」という方は、どうぞお声がけください。
宇都宮駅前の店舗では、在庫の中から実物をご覧いただきながらお選びいただけます(月〜土 10:00〜18:00)。ご来店が難しい方は、お問い合わせフォームからお気軽にご質問ください。
遠方の方にはオンライン相談(平日9時・18時/40分)もご用意しています。
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