象牙の印鑑を探していると、「マンモスの牙」や「マッコウクジラの歯」の印鑑も目に入ります。見た目は似ていますが、硬さも、取れる量も、選び方も違います。
鈴印では、象牙のほかにマンモスの牙とマッコウクジラの歯の印材も扱っています。実際に仕入れて彫っている立場から、違いと選び方をまとめました。
3つとも、生きものの「歯」からできた素材です

象牙は、象の上あごの前歯が長く伸びたものです。骨ではなく歯で、主成分は人の歯と同じカルシウムです。
マンモスの牙も、象牙と同じ象牙質でできています。マッコウクジラの歯も、象牙と同じカルシウム質の素材です。
どれも捺したときの印影が鮮明できめ細かく、時間がたつほど美しさが増していきます。そのうえで、違いは次のとおりです。
| 象牙 | マンモスの牙 | マッコウクジラの歯 | |
|---|---|---|---|
| もとの生きもの | アフリカ象・アジア象 | 1万年以上前の氷河期にいたマンモス。シベリアの永久凍土から今も掘り出されている | 歯を持つ動物で世界最大級のマッコウクジラ |
| 硬さ | 硬いハード、柔らかいソフトなど、牙によって違う | 象牙のソフトより柔らかめ。水牛よりははるかに丈夫 | 象牙をはるかに上回る |
| 見た目 | 牙の中心に近いほどキメが細かい | 良いものは象牙とほとんど同じ。質が落ちるとヒビや色むらが目立つ | 芯を中心にした、年輪のような模様 |
| 取れる量 | 牙1本からおよそ200本。どの等級が取れるかは切ってみるまで分からない | 品質の差が大きく、きれいな部分は非常に限られる | 歯全体の2割ほど。国内の在庫は数えるほど |
| 鈴印の扱い | 等級ごとに扱う。おすすめは極上 | 極上だけ | 入手できたサイズだけ |
マンモスの牙と象牙の違い

マンモスは、およそ400万年前から1万年前ごろまで(最後の群れは約4,000年前まで)、シベリアと北アメリカにいた生きものです。印材になる牙は、いわば化石です。
象牙といちばん違うのは、品質の差の大きさです。長いあいだ氷や土の中に眠っていたため、牙によってヒビが入っていたり、土の色が移って色むらが出ていたりします。少しでも質が落ちると、印鑑になったときにそれがはっきり見えてしまいます。
そのため鈴印では、マンモスは極上だけを扱っています。極上は牙のいちばん中心の部分で、ヒビや色むらの影響をいちばん受けにくく、きれいな状態が残っています。
硬さは象牙より柔らかめです。象牙にも硬いハードと柔らかいソフトがありますが、マンモスはそのソフトよりも柔らかめ。とはいえ象牙と同じ象牙質なので、水牛と比べればはるかに丈夫です。
見た目だけで見分けるのは、日頃象牙を見慣れている私たちでも「なんとなく違う」と感じる程度です。牙の表面に出る細い線が交わる角度(シュレーゲル角)が目安になり、環境省の識別マニュアルにも載っています。私たちがはっきり分かるのは、むしろ彫ったときです。象牙より柔らかく乾いた手応えで、持つと象牙より軽い。そこで見極めています。
彫ったときの手応えの違いは、象牙・マンモス・クジラを並べてブログ「マンモスとクジラ、象牙とどっちがいい?|彫り手が刃物で感じる違い」に書きました。
鈴印のマンモスは、実印のほか、銀行印と認印もご用意しています。
マッコウクジラの歯と象牙の違い

マッコウクジラは、歯を持つ動物の中で世界最大級のクジラです。その歯から切り出したのが、クジラの印材です。
象牙といちばん違うのは硬さです。象牙をはるかに上回り、彫るときは必ずと言っていいほど刃物が折れるほどです。
もう一つの違いは、取れる量です。クジラの歯は小さく、印材にできるのは、芯の穴が詰まった先端寄りの、ごく狭い部分だけです。外側の「皮」と呼ばれる部分ははがれやすいので使えません。歯全体のうち印材になるのは2割ほどで、太さにも限りがあります。クジラの印材が基本的に中心に芯を持っているのは、このためです。
こうした理由から、マッコウクジラの印材は象牙よりも希少で、国内の在庫も数えるほどしかありません。中でも、フルネームを彫れる実印のサイズは特に貴重です。
どれを選ぶか
3つとも、印鑑の素材としては最上の部類です。違いは、何を大事にするかです。
- 迷ったら、象牙の極上。象牙には、硬さだけでなく粘りとしなりがあり、欠けにくい。朱肉との馴染みがよく、磨くほど光沢が出ます。鈴印のおすすめは、牙の中心に近いキメの細かい極上です。等級と価格は象牙印鑑の選び方と価格にまとめています。
- 太古の生きものに惹かれるなら、マンモス。見た目は象牙とほとんど同じで、鈴印では極上だけです。マンモスを選ぶ方の決め手は、性能よりも「あの太古の巨大な生きものの一部を手にする」という物語のようです。
- 象牙よりさらに数の少ない素材なら、マッコウクジラ。いちばん硬く、芯を中心にした模様は他の素材にはありません。サイズは、その時に入手できたものだけになります。
象牙の極上とマンモスを18金でつないだ「象顔王」という印鑑もあります。メーカーが50本だけ作ったもので、象の彫刻の部分がマンモスです。
マンモスを購入されたお客様の言葉です。「歴史でしか存在を知らない、もう現存しない生物というだけで、それ以上ない魅力があります。」
マッコウクジラを選ばれたお客様の一言も印象的でした。「あの世界最大級のクジラの一部を手にするというロマン。これはなにものにも代えられません。」
象牙も、マンモスの牙も、クジラの歯も、もとは生きものの体の一部です。印鑑にすれば何十年も、次の世代まで使えます。いただいた命を最後まで生かしきる。どの素材を彫るときも、鈴印の考えは同じです。
価格と在庫は、商品ページで
天然の素材なので、価格は1本ごと、サイズごとに違います。在庫も入れ替わるため、最新のものは商品ページでご覧ください。
お手入れは、マンモスもクジラも象牙と同じでかまいません。
お手持ちのマッコウクジラの歯を、印材に加工するご相談もお受けしています。歯の状態によっては印材が取れないこともあるため、現物を確かめてからのご案内になります。
商品と関連ページ
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